駆けだしは交番勤務
1968年4月、警察庁に入ると、すぐに東京・中野の警察大学校での教育が始まった。同期は十三人、全寮制だった。午前六時の気象に始まり、午後十時の点呼まで、坐学や柔・剣道などの実技、実習がたて続けに行われた。
学生時代の自由奔放な生活から、厳しい規律・規則だらけの生活に変わった。苦痛の連続だった。警察官になるために必要なことだと思いながらも「こんな組織で本当にやっていけるのだろうか」と思ったことは一度や二度ではなかった。
軍隊生活のような研修は三ヶ月に及んだが、その中には三週間の交番実習が入っていた。配属された先は東京・渋谷区の繁華街・道玄坂にある宇田川交番だった。
初めて制服を着て、交番の前に立った。その時の感想は「うれしいとか期待で胸が弾むといったことよりも、警察官の装備はやたらと重いな」というものだった。