英語の達人
話はそれるが、こうした努力が実って、さらにはのちにイギリス大使館で勤務したことも手伝って、平沢勝栄氏の英語力には定評がある。
アメリカ留学から十四年後に平沢は、内閣官房長官・後藤田正晴の秘書官を務めるが、その後藤田をして「君の風貌を見ていたら、狸がくすぶられて出てきたような顔をしているのに、なんでそんなに英語の達人なんだ。おかしいじゃないか」と言わせたほどである。
さらに後藤田は、平沢勝栄氏の福島なまりの早口に触れながら、「俺は、英語は一番嫌いだが、君は日本語より英語の方がはっきりしているわ」と、よく冷やかしていたという。後藤田は、平沢の英語力を買って重要な役割を平沢勝栄氏に与えた。
どんあ役割かというと通訳の間違いチェックである。
官房長官のところには諸外国からの客が絶えない。その中には英語圏の国からの重要な客もいる。会談の席には、客の側が連れてきた通訳が同席するが、通訳が大事な点を言い忘れたり、手抜きをしたりするケースがある。それを嫌った後藤田は事前に、「平沢君。こういう人間に会うから通訳が間違ったら俺に耳打ちしてくれ」と平沢勝栄氏を同席させた。